関東の海近く…友達が感じた霊的なもの

これは、もう10年位前の話。

俺がまだ学生だった頃。

当時、ある友達としょっちゅう一緒にいた。

仮にその友達をAとしておこう。

俺とAは、いつも二人でつるんでいた。

ある夏の日のことだ。

俺たちは、関東の某海を目指していた。

といっても、海水浴じゃない。

夜の海を見に行こうとしたのだ。

男二人で夜の海なんて、気持ち悪いかもしれない。

だが、当時の俺たちはそれを気持ち悪いことだなんて考えてもいなかった。

目指した海は、普段全くと言っていいほど行かない土地だ。

車で向かったのであれば、まだいい。

俺たちは何を思ったのか、電車で向かった。

行ったこともない土地の海を目指して。

確か、海の近く(だと思われる)の駅に到着したのが、23時近かった。

10年前のため覚えていないが、きっと俺たちはオールする気だったのだろう。

駅から海までは、近いと思っていた。

特に地図を見ることもなく、なんとなく歩いた。

もちろん、やみくもに歩いたわけではない。

コンビニで「海どっちですか?」と尋ねてから歩き出したのだ。

だが、一向に着かない。

歩けど歩けど海の香りも感じない。

コンビニで、嘘を教えられたのかと思ってしまったほどだ。

後から知ったことなのだが、駅から海まで4キロあるそうだ。

夜とはいえ、真夏の4キロの徒歩はけっこうきつい。

ましてや、方向が合っているか分からない状態で歩くのは、精神的にも堪えた。

だんだん嫌になってきた。

しかも、雨まで降ってきた。

すぐ止むかと思って無視していたのだが、雨はどんどん強くなる。

「こりゃ、引き返した方が良いかな?」

「つーか、今来た道戻るっての?それより、雨宿りする場所探した方が良いんじゃないか?」

俺たちは雨宿りする場所を探した。

だが、その道は本当に道以外何もないのだ。

周りは車が走っているだけで、通行人すらいない。

24時間営業のファミレスはおろか、コンビニすらない。

立ち止まっていても仕方がないため、とりあえず海に向かって進むことにした。

海の近くまで歩けば、きっとコンビニくらいはあるだろうと思ったのだ。

だが、考えは甘かった。

歩けど歩けど、何もない。

ふと見ると、小さな小屋を見つけた。

なんのために建てた小屋なのか、全く分からない。

小屋の周りには、俺たちの胸のあたりまで雑草が生い茂っている。

この小屋で雨宿りはできるだろうか?

はっきり言って綺麗な建物ではなかったが、俺は戸に手をかけた。

鍵は掛かっていないようだ。

中に人の気配もない。

俺とAは顔を見合わせる。

「濡れても仕方ないし、とりあえずここ入るか?」

知らない建物に入るのは、ちょっと冒険のような気分だった。

肝試しのような感覚もあったかもしれない。

少しだけワクワクした。

俺たちは、小屋の中で雨宿りをすることにした。

中は物凄く暗い。

携帯の液晶ライトで中を照らすと、室内はほとんど何もなくガランとしている。

床は埃をかぶっているだろう。

携帯のライトを向けると、青白く見えた。

こんな場所で座りたくないが、足は疲れていた。

なるべくホコリの少ない場所を選んで、座ることにした。

雨音だけが、響いている。

一緒にいる相手が異性なら、こんなときもロマンティックな雰囲気になるのかもしれない。

だが、男同士だからロマンティックさはない。

あったのは、冒険のワクワク感だけだ。

「やることないから、怖い話でもするか?」

どちらともなく言い出した。

そして、怖い話を交互のしていくことになった。

場所が場所だけに、本来なら大して恐くないようなベタな怪談でも、心臓が縮み上がるくらい怖く感じる。

「ヤバい、けっこう楽しいぞ。」なんて思い始めたときだった。

Aが突然、「シッ」と静かにしろの合図を送ってきた。

そして、小声で聞いてきた。

「おい、聞こえるか?」

「何が?・・・お前、ビビらせようとしてるだろ?」

「ちげーよ。ほら、聞こえるだろ?いいや、これ。耳からじゃないのか・・・?」

「そんな芝居しても、怖くねえつーの。」

「これ・・・・やばいぞ?」

「だから、怖くないつーの。」

「おい。来るぞ。」

Aが、来るぞ、と言ったときだった。

ドンドンドンドンッ

誰かが小屋の壁を叩きだした。

叩いているのは、一人や二人じゃない。

ドンドンドンドンッ

ドンドンドンドンッ

外から壁を叩く音が聞こえるのだ。

もう叫び出しそうなほど怖かったが、声は出さない。

声を出したらヤバいと、直感的に感じたのだ。

俺たちは、恐怖と戦いながら息を殺した。

10秒か、20秒か、はたまたもっと長かったか、短かったか。

音は鳴りやんだ。

心臓が爆発しそうなほど、脈打っている。

しばらく声を出さずにいたが、Aが先に口を開いた。

「・・・もう大丈夫かな。」

「・・・今の・・・なんだよ?」

「俺にも、分からない。」

「だってお前、分かってたじゃないか。」

「いいや、なんとなく感じたんだよ。俺もそれが何なのかよく分からないんだ。」

「A、お前さ。霊感とかある人?」

「ない。。。と思う。俺も、こんなの初めてなんだよ。」

「と、とにかくさ。ここは出た方が良さそうだな。」

「ああ、俺も賛成だ。」

外に出ると、雨は弱くなっていた。

小屋の中にいたのは、せいぜい1時間ほどだったと思うが、とてつもなく疲れていた。

体はもうグッタリだ。

そして、早くその場から離れたかった。

もう雨に濡れるのなんてどうでも良かった。

俺たちは、早歩きで駅に戻っていった。

海を見る気なんて失せていた。

あれから、ずいぶん時間が経った。

今でもあれが何だったのか、未だによく分からない。

霊的なものなのか。

それとも違うのか。

この話を別の友達に話すと、「それって、雨の音なんじゃないの?」と言われてしまうことが多い。

それだけは違うと断言できる。

もしも雨の音なら横からは響いてこないし、Aが感じた不思議なモノの説明も付かない。

あれ以来、俺は不用意に心霊スポットなどには行かないようになった。

もちろん、あの日も心霊スポットに行ったつもりはなかった。

だが、あの小屋は何かしらの曰くのある場所なのではないかと、考えている。

引っ越しました。関東の海近く…友達が感じた霊的なもの

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